成果型人事制度の導入により着実な利益計画が可能になった製造業
食品製造業M社は典型的労働集約型企業であるが、持ち前のバイタリティでこれまで売上を着実に伸ばしてきた。しかし、近年に至り売上高は低下の一途をたどり、平成16年度はピーク時の30%程度に落ち込んでしまった。これまではよいものを造れば売れるという神話を固く信じ込み、品質管理にのみ経営努力を集中させてきた。ここにきて、売上の低下とともに人件費の低水準が顕在化し、中堅社員から賃金に対する不満が聞かれるようになったため、社長は成果給の導入を検討すべく当研究所に相談を求めてきたものである。
早速、既存の賃金実績を用いて主成分分析と重回帰分析(多変量解析)を試みた。その結果経営者の価値観(潜在的なものも含めて)が明らかになった。これを尺度にして、当社の「成果」を数値で捉える業績評価制度を企画し実施したところ、時代にそぐわない自己中心的な考え方が排除されるようになり、中堅社員層から高く評価されるようになったため、労働分配率が著しく低下し、結果として製造原価、販売管理費の節約に繋がり、売上が低迷しているにもかかわらず、大幅な利益確保が実現した。
モラールサーベイの実施により、効率的な教育・訓練体系が確立
業務用製品卸売業S社は、これまで積極的に社員研修を行ってきたため、教育・訓練には自信をもっていたが、その成果という面ではかなりの不満もいだいていた。今回当研究所の進言を受け入れ、モラールサーベイを実施することになった。実施後直ちに分析し、結果を報告書に纏めて提出したところ、社長はじめ幹部はその内容が信じられないという様子であった。その主な疑問点は、人事制度や服務規程などの定型的なものに対する従業員の見方に大きなバラツキがあることである。つまり、個人の感じ方を問うているものはともかく、規則が明確に定められているものに対しても、そうした規則はないとこたえるもの、あると答えたものが両極端に別れるという現象が見られたからである。
平均点が比較的高いのが救いではあったが、それだけに標準偏差が大きく2極化していることに大きな衝撃を受けたようである。実は、こうした現象はどの企業でも生じることであるが、人一倍研修に熱心であっただけにショックは隠せなかったようだ。
ここから得られた教訓は、どんなに高度な内容でも一方的に注入するだけでは、身につきにくいということである。教育・訓練制度を設計する以前に、従業員個々人の教育ニーズを十分に把握しておかなければ、期待可能性が薄いという実例である。